―誰も言えない性の悩みを解決!?
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◆プロローグ
学園一の堅物、七瀬綾香。
成績は常にトップ、風紀委員長として校則違反を見逃さない厳格さ。
男子からは「鉄仮面」、女子からは「模範生」と呼ばれる存在。
――だが、彼女には“ある一点”においてだけ、異常な情熱を燃やす弱点があった。
「みんな! 性教育は命に直結する大事な学問です!」
授業でもないのに、教室の前に立ち、性の正しい知識を語り出す委員長。
今日も俺――平凡男子高校生・水島悠斗は、その異様な光景を目の当たりにしていた。
◆1. 委員長の暴走
昼休みの教室。
七瀬委員長はチョークを手に黒板へ大きく文字を書き殴る。
【避妊】【同意】【尊重】
「男子は衝動に流されやすい生き物です! でも、だからこそ正しい知識と節度を身につけなければなりません!」
……いや、ここ普通の教室だから。
ざわめくクラスメイト。
恥ずかしそうに笑う女子。ニヤニヤする男子。
「七瀬、授業じゃないんだしやめ――」
俺が口を挟んだ瞬間、委員長の鋭い視線が突き刺さる。
「水島くん! あなたは男子の代表として、この場で模範を示すのです!」
「な、なんで俺!?」
「反論したということは、理解していない証拠です! よろしい、個別指導です!」
こうして俺は、クラス全員の前で「委員長の性教育補助係」に任命されてしまった。
◆2. 保健室での個別指導
放課後、保健室。
ベッドの前に立たされた俺の前で、委員長は分厚い参考書を広げている。
「性の知識は誰にも相談できないからこそ、誤解やトラブルを生むのです。だから私が正しく指導します」
「いや、俺そんなに困ってないんですけど……」
「黙りなさい! これは学問です!」
そう言って、委員長は突然俺の腕を掴み、自分の手を重ねた。
「手を握る。ただそれだけでも、相手の鼓動や緊張が伝わるでしょう?」
「え、あ、はい……」
委員長の手は思ったより小さくて温かかった。
普段は冷たい鉄仮面みたいな彼女が、今は顔を赤くしながら真剣に語っている。
「……スキンシップはただの欲望ではありません。信頼と安心の証なんです」
一瞬、俺は見惚れてしまった。
だけど次の瞬間、彼女は教科書をバン!と閉じる。
「次は実習です!」
「実習!?」
「あなたが“彼女”にどう接するべきか、シミュレーションします」
……俺の理性が、またもや試される予感しかしなかった。
◆3. 委員長の家庭訪問
数日後。
なぜか委員長が我が家にやってきた。
「家庭でも性教育の意識を高めなければ意味がありません。よって、家庭訪問です!」
「そんな家庭訪問聞いたことないぞ!?」
両親は仕事で不在。俺と委員長、二人きり。
リビングでテーブルを挟み、彼女は資料を広げる。
「まずは正しい避妊の知識について――」
「い、いや、その話をリビングでするのは……!」
「恥ずかしがってはいけません! 命に関わることです!」
彼女は真面目に話しているのに、その頬はほんのり赤い。
視線が俺に向けられるたび、ドキッとする。
「……水島くん」
「な、なんだよ」
「あなたは……将来、恋人を大切にできますか?」
いつもの厳しい口調ではなく、不安げな声。
思わず俺は真剣に答えていた。
「……できる。できるようになりたい」
「そう。なら、きっと大丈夫ね」
委員長は微笑んだ。その笑顔は初めて見るほど可愛らしかった。
だが次の瞬間、彼女は資料をめくり――
「それでは次に、正しいキスの仕方について」
「話戻るのおおお!?」
◆4. 文化祭騒動
そして迎えた文化祭。
クラス展示で使う教室を、委員長は勝手に「性教育啓発コーナー」にしてしまった。
コンドームの模型、避妊具の解説ポスター、恋愛相談アンケート。
……完全に保健体育の出張授業である。
「誰も言えない悩みを解決するのが、私の使命です!」
生徒たちは最初こそ驚いていたが、委員長の真剣な態度に次第に相談し始めた。
「彼氏とどう距離を縮めたらいいか」
「生理痛のときにどう伝えればいいか」
「彼女が嫌がっているとき、どうすれば」
委員長は一人ひとりに丁寧に答えていた。
その姿を見て、俺は気づいた。
――この人、本当に性のことを真面目に考えてるんだ。
だからこそ必死で伝えようとしてるんだ。
胸が熱くなった。
◆5. クライマックス
展示も終わり、片付けの後。
委員長と二人きりになった教室で、俺は思わず口を開いた。
「……七瀬。今日のあんた、すごくかっこよかったよ」
「え?」
「みんな、本気で悩んでたんだろ? あんたが真剣に答えてくれたから、安心してた」
「……そう、見えた?」
委員長は珍しく視線を逸らした。頬が赤い。
俺は勇気を振り絞り、続けた。
「……俺も、もし悩んだら相談していいか?」
「もちろんよ!」
「じゃあ……今、悩んでる」
「な、なに?」
「――七瀬のことが好きすぎて、どうしたらいいかわからない」
教室に沈黙。
委員長の顔が一気に真っ赤になる。
「ば、馬鹿……っ! そういうことは……もっとちゃんとした場所で言いなさい!」
「え、じゃあOKってこと?」
「だ、だからっ……補助係として、これからも……私のそばにいて、勉強しなさい!」
そう言って、委員長は俺の胸を拳で軽く叩いた。
けれどその瞳は、嬉しそうに揺れていた。
◆エピローグ
後日。
廊下に貼られた掲示板には、新しい張り紙があった。
『性教育研究会 新入部員募集中!』
指導担当:風紀委員長 七瀬綾香
補助係:水島悠斗
「ちょ、勝手に名前入れるなぁぁぁぁ!」
俺の叫び声が響き渡る。
でも心の中は、不思議と温かかった。
――これから先も、真面目で暴走気味な委員長と一緒に、
“誰も言えない悩み”を解決していくのだろう。
完


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